卓上彼氏
あったあった、これだ!
──────“sollos”。
イギリス人男性四人組のロックバンドグループ。
日本ではまだまだマイナーのようで、棚に売り出されているCDはこのアルバム一種類だけだった。
へぇ、結構良さそう。
私は洋楽、特にバンドにはからっきし知識がないから詳しいことはわからないが、とりあえずロックバンドといってもこのグループはヘビメタのようにハードな音楽では無いようだ。
実際に曲は聴いていないからわからないけれど、アルバムのジャケットに写る四人はいたって普通の風貌だし、ジャケットも黒を基調としていてシックな感じだった。
スタッズの付いた革ジャンなんかを着て、派手なメイクに奇抜な髪型、おまけに激しいヘドバンなんかをするようなものは、私は苦手だった。
「──みかみそんな音楽聴くっけ?」
「違うよヨク~、これはと……」
言いかけて、口を紡ぐ。
「藤堂くん?」
ヨクがいたずらっぽく笑う。
────!
図星だったから、返事ができなかった。
そう、このバンドグループは藤堂くんが前に好きだと言っていたのだった。
私、無意識に気になってたの??
彼氏といるのに、他の男子のことばっかり考えてるなんて……
「…違うよ」
私は精一杯の声を絞りだす。
「それ、あの人が好きだって言ってたから聴こうと思ったの?そうだよね、だってみかみ…」
「やめてッッッッ!!!!!」
考えるより先に声が出た。
周りのお客さんが訝しげな顔をしてこちらを見る。
私はその表情を見てはっとした。
「───ヨク、もう帰ろう」
私は結局ゆりの勧めてくれたCDも買わずに店を出たのだった。