卓上彼氏
とりあえず私は絡まないことが身のためだと思い、無視してその場を去ろうとした。
「花園ってさぁ、ヲタクなんだろ?」
その言葉で私の行動はピタリと止まる。
「…は…?」
藤堂くんに背を向けたまま私は精一杯の返事をした。
「俺知ってっから。お前のバッグからこの前アニメの下敷き見えてたし、よく授業中ノートに描いてるイラストも丸見えだったし。
つーかめっちゃ上手いよな~アレ。斜め後ろの俺の席からよく見えんだもん」
カアァッと全身が熱くなる。
混乱と緊張で言葉が出なくなった。
違う、と言いたくても口が動かない。
だって、藤堂くんの言っていることは正しいから。
「花園は実はヲタクでしたーなんて言ったらみんな驚くだろーなぁ~。だってお前全然陰キャラじゃないしヲタクってそぶり見せないし運動部入ってるし」
「…………」
「あれ?花園?なんか返事しろって無視すんなよ」
バシッ!
「最っっっ低!!!」
もう一つ床にあったバレーボールを思いっきり藤堂くんに投げつけた。
「いっ…た………」
悔しい、泣き顔見られたかも。
溢れる涙を拭いながら、私はダッシュで体育館をあとにした。