卓上彼氏




「――――もういいよ、目、開けて」






「わぁっ!!すごい!キレー……」





その女性の目の前には、イルミネーションに光り輝くメリーゴーランドが回っていた。






あたりを見渡すと、そこは無人の遊園地。






「アキの方が綺麗だよ」







背の高い男性は王道のセリフを吐いて彼女の唇にキスをした。








―――――ッ、キャーッ!!///





私は思わず声を出しそうになった。





突然両手を口にあてがったものだから、ひじがあたって隣にあったポップコーンを二、三個落としてしまった。






静かなる映画館の中には、ラブストーリーに包まれたピンク色の空気が漂っていた。








それからその物語はどんどん展開してゆき、ラスト近くでは幸せな二人に不幸が舞い降りて彼氏が重病にかかってしまう。





そんな余命の中で二人は最期の時を過ごし、ラストシーンは感動の最期だった。







エンドロールと主題歌のバラードが流れたあと、場内は明るくなり客は流れるプールのように出口へ向かう。







私もちゃんと胸元にスマホがぶらさがっていることを確認してからシアタールームをあとにした。







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