卓上彼氏


「………はーっ、良かったね~」






共に出口に向かう観客たちの熱気が冷めない中、スマホを持ち上げ先ほどの涙を拭った。






「ハハ、みかみは涙もろいんだな」






今にも頭を撫でてくれそうな声で彼は笑った。






「だって感動したじゃん!最後のあれなに!?あんなのかわいそうすぎるよーっ」






また思い出して涙があふれそうになる。






「まー俺も少しうるっときたかな」






「嘘だぁっ!そのセリフのわりには全然ケロッとした顔じゃん!!」






「この顔は俺の元々の顔だわ」







そのヨクの一言で二人はどっと吹き出した。






ふと周りに目がいったときに、周りの痛い刺すような視線に気がついて笑うのをやめた。







「……周りからみたら私一人でスマホ握って爆笑してる変な人だよね」




小声でコソコソヨクに耳打ちした。




「ん~…確かに爆笑は怪しいかもしれないけど、普段の会話ならテレビ電話だと思われるから平気じゃん?」





それもそうかと思い、以後はまた普段の音量で話しかけた。






「もう昼だね、なんかお腹すいちゃった。お昼食べない?」




「俺もすいたーっ。飯食おう」





ヨクも私みたいにお腹がすいたような顔をして腹部に手をやった。




「ヨクもお腹すくの?」





ふとわいた質問をしてみる。





「なっ、二次元なめんなよ?俺だって普通に腹減ったり眠くなったりするし」





いかにも遺憾に堪えない!といった表情をヨクはみせた。





「ふぅん、驚き!」



私はいたずらっぽく画面にウインクした。





「————私のお気に入りのパスタのお店行こっか」

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