卓上彼氏
デートの帰り道、私たちは綺麗な夜空を見上げながら歩いた。
「楽しかったね~っ」
星空を見上げたまま私はつぶやいた。
「…うん、ホントに」
ヨクも星空にうっとりしたような声だった。
今日一日あったいろいろなことを思い出した。
パスタのメニューを見せたら丸々同じものをヨクが画面の中に出した時はまるで手品みたいで驚いた。
ヨクいわく、
『画面の中なら不可能は無い』
らしい。
だからヨクも私と同じようにパスタを楽しむことができた。
ただ、ウエイトレスに『お一人様でしょうか』、ときかれた時は、さみしくなかったといえば嘘になる。
でも、本当に素敵な一日だった。
ショッピングも一緒に行ったし三時間くらいフードコートで語ったりもした。
ヨクには話すことがなにも無いみたいだったから、主に私の話をした。
家族のこと、友達のこと、学校のこと、勉強、恋愛—————…。
「こんなに楽しかったデートは初めてだよ、ヨク」
これ以上ない感謝を込めて私は言った。
「それは良かったお姫さま」
ヨクは目を細めて笑った。私は、この笑顔が好きだと心から思った。