卓上彼氏
母の病と藤堂くんと
それは、突然のことだった。
「花園さんちょっと来て!!!」
三時間目の授業中、学年主任の先生がいきなり教室に入ってきた。
そのあまりの先生のこわばった表情に、嫌な予感しかしなかった。
一刻を争うような口調だったから、何の質問もすることなく私は先生に続いて教室を出た。
カッカッカッカッというヒールの音が廊下に響く。
先生の早歩きに置いていかれないように必死で歩いた。
「あの…どうしたんですか」
ここへきてやっと肝心の質問ができた。
その返事を早く聞きたいような、聞きたくないような。
「花園さんのお母さんの容体が豹変したって電話がお姉さんから入ってね…。とにかく、私の車を出すから病院に急ぎましょう!」
先生は振り返らず短く答えた。
—————お母さん…!!!
嫌なことを考えたら現実になる気がして、それ以上は考えないことにした。
先生と私はその後車に乗るまでしばらく無言だった。