卓上彼氏
まだそんなに走らないうちに、また信号機が見えてきた。
今度はもうすでに赤信号。
はーぁ、ついに捕まった。
歩道から歩行者が今まさに歩き出そうとしていた。
しかし。
まるで私たちの車を見計らったように、突然青信号になった。
「えぇっ?!」
今度はさすがに私たちも偶然じゃないと思い、先程より大きな声をあげた。
「ちょっとちょっとどういうことよこれーっ!」
私たちの目の前に見える信号機が歩行者用の信号機とのタイミングに関係なく次々と青信号に変わっていく。
プップー!!
キキーッ!!
きゃああぁぁっ!!
あたりから騒がしい音がたくさん聞こえてきた。
もう道路は混乱状態。
私たちは一刻を争う事情があったゆえ、ためらうことなくその中を進んでいった。
そのあとも信号機は次々と青へ。
これって……——————もしかして!!
「ヨクだ…」
あたりを見まわしながらつぶやくと、私はスマホをポケットから荒々しく取り出した。
画面はシャットダウンして真っ暗だった。
「ちょっとヨク?!ヨクってば!!ヨク!!!やめて!危ないから!!ねえってば!!」
それでも画面は起動することなく暗いままだった。
「花園さん?!しっかりして!」
母のこととこの信号機のトラブルとで私がパニックになったんだと思ったらしく、先生は力強く私の肩を抑えた。
これ以上ヨクに呼びかけても先生を不安にさせるだけだと思い、私は黙ることにした。
信号機に一度も捕まらなかったせいか、異常に速く病院に着いた。