卓上彼氏
「いるんだ……彼氏」
先に口を開いたのは藤堂くんだった。
「やっ、いない!」
思わず反射的に言ってしまった。
「え、じゃ、違ったのか、なんだ」
藤堂くんは小さく笑ってからこう言った。
「じゃあ、リバティーシティーは誰と行ったん?」
「え……」
予想外の質問に戸惑う。
どうしよう、ヘタに知人の名前出せないし……後々困るようなめんどくさい嘘もつきたくないし…。
私が黙ってしまっているのを見ると、藤堂くんは彼自身の両頬をパシッと叩いた。
「だめだ俺、ごめん、誰と行ったかなんて俺が聞くようなことじゃねーよな。花園のプライベートだし。俺キモいわ!!」
「や…別にそんな……!」
藤堂くんのあまりの自虐に戸惑った。
「————…でも、彼氏いないんだよな?…だったら俺の家来るの問題じゃねーよな!来いよ」
来いよって…そんな俺様な……。
「…うん、同い年で同じ趣味の妹さん、会ってみたいかも」
爽やか過ぎる藤堂くんの笑顔と、早くこの話を終わらせたかったことからこの約束を私はオッケーしてしまったのだった。