記憶のキロク
 氷のようなそれでいて、無機的な鉄の冷たさが伝わってくる

 ――死の感触。

 それさえも心地よいと感じ始めていた。

 どうやら、知らず手に力が入っていたらしく、

 薄っすらと皮膚が切れ、紅い血の珠が湧きでてくる。

 さらに力を込め、刃を引いた。


 鋭い痛みが、手首から全身へと駆け巡る。
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