記憶のキロク
「……はるか……ハルカ……どんな字を書くの?」

 まさかとは、思いつつも確認せずにはいられなかった。

「ん? えっとね。春の風って書くんだよ」
 
 春の風……春風だと! 

 春風という言葉のリズムを舌のうえで転がし、何度も反復する。

 が、結果は同じだった。

 死んだ妹の名前。
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