記憶のキロク
 家の中に、意を決して入ると重厚な臭いが嗅覚を刺激し、吐き気がした。

 だが、それ以上に静か過ぎた。

 音が死滅したかのように重い静寂が、

 家全体に蔓延っていた。

 静寂の中を、この纏わり付くような臭いの中を母さんたちが居るであろう茶の間へと足を進めた。

 そこは、本当に異質で異様で異常だった。
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