記憶のキロク
 いや、奈落には落ちていない。

 むしろ暗闇から現に引き上げられた。

 嫌な汗が頬伝い流れ落ちる。

 呼吸は荒く、ひどく煩わしい。

 それよりも不快だった。

 俺が両親を殺す夢を見たというのが。

 どんな理由があろうとそれは、不快以外の何者でもなかった。

 夢で、刺された傷が痛む。

 夢で、壊れた精神が傷む

 なんで、あんな夢を見たのか考えたくもない。

 そもそも考える事自体が両親に対する冒涜だ。
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