記憶のキロク
 いや違った。

 春風ちゃんは、頭からすっぽりと布団に包まって、泣いていた。

「どうした? 怖い夢でも見たのか?」

 微かに震えていた布団の動きが止まる。

 それから、数瞬の間を置いて、泣きはらした目をした春風ちゃんが、布団からひょっ
こりと顔を出した。

「なんだ。そんなに怖い夢だったのか」
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