記憶のキロク
 夜の静寂


 さて、どうしよう。

 あんなことを言った以上は、春風ちゃんが寝るのを待つしかなくなった訳だが、

 沈黙が返ってくるとは思わなかった。

 静寂が、春風ちゃんの発した小さな小さな声で壊れた。

「死にたくないよ……死ぬのはいやぁ……寝たら二度と起きられないかもしれない。知らない間に、私が私でなくなっているかもしれない。みんなから、忘れられるのはいや。お父さんたちが悲しむのもいやぁ。そんなのはいやぁ。いやだよぉ………」
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