記憶のキロク
思考
 春風ちゃんが居なくなると急に静かになるんだな。

 春風ちゃんがこの病室のムードメーカーなのかもな。

『死刑だなんてひどすぎるよ』か

 ……唐突に春風ちゃんの言葉が脳裏を過ぎった。
 たしかに死刑なんてものは、何にも成らないんだよな。

 死ぬってことは、直前までが罰であって、死んでしまえば、究極の意味での終わり。

 そこには、何も無い。

 幸せも

 自由も

 幸福も
 
 楽しみも

 喜びも

 苦痛も

 反省も

 不幸も

 厄災も

 自分さえも無い。

 在るのは、『無』だけ。
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