記憶のキロク
「ほう。中々面白い手を討つな。じゃがこれで、封じたぞ。後二手で王手じゃ」

 パチン

 飛車取りの布石を看破されただけじゃなく、布石自体を潰された。

「うな。何でわかったんだ?」

 パチン

「将棋は、棋士の心を映す映写機じゃ。おぬしの場合は、色々考えているようじゃが、正直すぎるわ。これじゃあ、敵に作戦を伝えてから攻め入るようなものじゃて。後一手」

 心理分析されてしまった。

 パチン

「なら、じいさんは俺の手を読んだ上で確実に潰すってことは、陰険?」

 ズズー

 茶で喉を潤しながら、次の手を考える。

「ふぉほっほほ。そうかもしれんが違うかもしれんぞ? ほら、おぬしの番じゃて、早よせんかい」

 そんなことを言われても、どんなに奇策を練ろうが今の布陣じゃあ完膚なきまでに潰されそうだ。

 ってか既に勝利へのカウントダウンされてるし。
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