記憶のキロク
「春風、いい子にしてたかい?」

「ん? あ! パパ。それにママも」

 春風ちゃんとスピードをしていたら、春風ちゃんの両親が来た。

 適当な挨拶をして去ろうとする俺を春風ちゃんの父親が呼び止めた。

「なんですか?」

「いや、たいした事じゃないんだが、春風と遊んでくれて、ありごとう。春風は昔から、身体が弱くてずっと病院生活だったから、友達らしい友達がほとんどいないから……」

「お安い御用です。それに、俺としても春風ちゃんと過ごす時間は楽しいですから」

「そう言ってもらえると、父親としては、うれしいようなさびしいような複雑な気分だね?」

 簡単な挨拶をして病室を出たが、何をして時間を潰そう?

 そもそも病室をでる必要があったのだろうか?

 じいさんと将棋をしてれば良かったのではないか?

 と言っても今さら、戻れないしな。

 くそ。後悔先に立たずってのは、このことか。
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