記憶のキロク
 俺は何もせずにただ、血塗られた手を見つめ、気づくと朝日が俺の手を照らしていた。

 いつもの朝は来なかった。

 いつもの朝? 当たり前だ。

 ここは病院で両親はもういないんだから。

 いつもの朝なんかが来るはずも無い。

 春風ちゃんは今、集中治療室なんだから、そうじゃなかったとしても、俺に春風ちゃんに会う資格なんて無かったんだ。
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