記憶のキロク
四日目の朝
「あら? 今日は早いんですね」
 
 看護士さんが話しかけてきたのが、解ったが、解っただけで反応しようとは思わなかった。

「そんなに、春風ちゃんと部屋が別々になったのが、寂しいんですか? あ! そうそう、春風ちゃんの意識が戻ったそうですよ。本当はだめなんですが、午後にでも会いに行ってあげて」

「そうですか」

 そっけなく、返事をしたが、看護士さんは別段気にした様子はなく、

「なんか、元気ないなー。どこか具合でも悪い?」

 それどころか、心配までされた。

 殺人者の心配なんてしなくてもいいのに。

「いえ、大丈夫です」

 社交辞令として、返事をしたら、看護士さんはそうと言って、出て行った
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