記憶のキロク
 一人になった。

 何もすることが無いのに、部屋にいると、独房にでもいる気分になってきた。

「こんどは、何暗い顔しておる? 折角の朝が台無しじゃて」

「暗くもなるさ。俺は、人殺しだったんだからな」

 もう、やけくそだった。が、不思議と後悔はしていないと思う。

「わしも人を殺したことくらいあるぞ。それも大量にじゃ」

 嘘くせぇ。

 人を殺したなんて、普通は言わねーよ。

 なら、言った俺は普通じゃねーんだな。

 そりゃそうか、人殺しなんだから、普通のわけねぇよな。
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