記憶のキロク
四日目の午後
 コンコン

 ノックをしてから、重い扉を開く。
 
そこに、春風ちゃんは、色々なチューブを身体に繋いでは、いるものの、しっかりと生きていた。

 ただぼーと、窓の外を眺めていた。

 どうやら、俺が来た事に気づいていないらしい。

「春風ちゃん具合はどう?」

「……へ? あ! お兄ちゃん」

 俺に気づくと、ぱあぁっと春の陽だまりのような笑顔を見せてくれた。

 そこには、始めてあった時の翳りは、微塵も無かった。

 それからすぐに俺の胸に、抱きついてきたかと思うと

「一人は、嫌だよぉ。寂しいよぉ……ひっく……こわいよぉ……えっぐ……」

 泣き出してしまった。
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