星王子の幸せレッスン
「ま、大丈夫か。お腹がすいたら、馬はそのうち戻ってくる」



王子さまはにっこりと微笑んだ。相変わらず、とびきり素敵な笑顔だ。



「君も遭難しているんだよね」



私は頷いた。そうだった。あまりに不思議な出来事があったせいで、自分の置かれている状況を忘れかけていた。



「人生でも遭難している」



王子さまは突然そんなことを口にした。私は驚いて王子さまの目を見つめた。



「仕事と恋人にふられた。そうでしょ?」



なぜ私のことを知っているのだろう?遠い星からやってきた王子さまはなんでもお見通しなのだろうか。 



「僕はね、相手の手を触るとその人のことがわかっちゃうんだ」



「…あの時…?」



先ほどの王子さまの仕草を思い出した。温かい手と頬の感覚が蘇ってきた。
< 27 / 39 >

この作品をシェア

pagetop