砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

左大臣 家別宅で、楓に付き添われ少年の格好をした毬は昏睡状態に陥っていた。

「毬っ」

 帝から話を聞いた後、龍星はすぐにそこへ駆け付けた。
 毬の顔は酷く青ざめていて、龍星から見れば一目で霊気に当たったと分かる。

「安倍様」

 楓の夢見るような熱い眼差しを気にも留めず、部屋から追い出して、龍星は毬の枕元で呪(しゅ)を唱えた。
 普段、冷静沈着で通っている龍星が、ここまで慌てた姿など誰も見たことがないだろう。

 艶やかな深紅の唇に、指先を当て念を込める。

 どのくらいの時間が経っただろうか。

 霊気が離れ、毬がゆっくりと瞳を開けた。
 龍星は心臓が潰れそうなほどの心配と動揺を隠せず、折れるほど強く彼女を抱きしめた。

「龍っ
 ……くるしいっ」

 腕の中で毬の声が聞こえる。

 ……俺の方が、ずっと苦しいよ、毬。

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