砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 龍星は黙って、毬が泣き止むのを待った。

 抱きしめたい欲望も、連れ去りたい衝動も、何もかも心の奥深くの襞に隠して。

 どのくらいの時間が経っただろう。

 毬は一生懸命泣き止み、しゃくりあげながらも顔を上げた。
 子供らしさを微塵も含まない、何かを決意した眼差しで真直ぐに龍星を見つめる。

 龍星の表情が微塵も変わらないのを確認してから、ふぅと息を吐き出した。

「分かったわ、楓。
 連れて帰って」

 感情を飲み込んだ、抑揚の無い声。

「かしこまりました。
 籠を手配するので、こちらでお待ち下さいね」

 楓はそう言うと、重い空気が立ち込めるその場から一足早く離れて行った。

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