砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 龍星は眉間に指を当て、ぐらつく感情を飲み込み思考を巡らせる。
 ばらばらだった欠片が集まって一つの形を作り上げていく。


 【あの人】というのはこの場合【毬】のことを指すのではあるまいか。

 帝は東宮時代嵐山にある御用所に足しげく通ってなかったか?
 毬は長いこと嵐山に住んでいたはずだ。

 二人の接点があっても不思議はないはずだ。


 ……毬……


 今朝まで隣で寝ていたのに。
 さっきまで、腕の中に居たのに。
 あの愛くるしい瞳で、真直ぐに龍星のことだけを見ていたのに。

 離れたくないと言って、泣いていたのに。
 自分のことを好きだといって、ぎこちなく接吻(キス)までしてくれたのに。




 龍星は胸騒ぎと息苦しさに、眉間に皺を寄せずにはいられなかった。

 


 他に、どうするすべもなく、ただぎゅっと、手の中のかんざしを握り締めた。
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