砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 誰からもすべからく崇められる存在。
 それが京の都における帝の存在である。

 が、その帝を全く崇めない輩も居た。
 その一人が安倍龍星である。

 異質な眼差しは大勢の中で目立ち、最初は帝を苛立たせていた。
 そのうち、興味を持てる対象となり、今となってはどうにかして平伏させたい相手となった。

 今、まさにそれが叶おうとしている。

 帝は身についている上から目線で口を開いた。

「あの子に逢ったのは、東宮だった時分。
 まだ感情を持て余していた頃。
 気晴らしに行った嵐山の別荘から抜け出し、草の上に寝そべって広い空を眺めていたんだ。
 いつになったらあっちに行って自由になれるんだろうって。

 そしたら、ばさって音がしてね。
 空から降ってきたんだ、神の遣いが」

< 123 / 463 >

この作品をシェア

pagetop