砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
一の二
「姫様、朝餉の支度が整いました」
女房の楓(かえで)の言葉に瞳をあける。
ここのところいつも、呪いのような怖い言葉に眠りを妨げられていた毬は、ここちよく目が覚めたことに驚いていた。
「いつも早起きなのに、今朝は珍しいですね」
言いながら楓が部屋に入ってくる。
何時もなら、太陽が昇り始める頃には、少年の格好で京の町を走っている毬だが、今朝は眩しい光に目を細める。
「昨日の夕刻はまた、どこに行かれていたのですか?」
身支度を手伝いながら、楓が問う。
毬はその言葉でようやく、昨日のことを思い出した。
初めて逢った、都で有名な陰陽師は、綺麗な顔で耳触りの良い声をしていて、知的でとても優しかった。
とはいえ、昨日の出来事を楓に上手く説明出来ない。
楓の方も、答えなど待ってはいないようで一方的に話を続ける。
「姫様、お会いになればよかったのに。
安倍様は噂に違わぬ見目麗しき素敵な方でしたのよ」
楓の声は高ぶっていて、彼女がどれだけ龍星に心奪われたか手にとるように伝わってくる。
実は、その龍星に抱きしめられたなんて言ったら彼女を落胆させそうで、毬はますます何も言えなくなり、ただ、適当に相槌を打った。
女房の楓(かえで)の言葉に瞳をあける。
ここのところいつも、呪いのような怖い言葉に眠りを妨げられていた毬は、ここちよく目が覚めたことに驚いていた。
「いつも早起きなのに、今朝は珍しいですね」
言いながら楓が部屋に入ってくる。
何時もなら、太陽が昇り始める頃には、少年の格好で京の町を走っている毬だが、今朝は眩しい光に目を細める。
「昨日の夕刻はまた、どこに行かれていたのですか?」
身支度を手伝いながら、楓が問う。
毬はその言葉でようやく、昨日のことを思い出した。
初めて逢った、都で有名な陰陽師は、綺麗な顔で耳触りの良い声をしていて、知的でとても優しかった。
とはいえ、昨日の出来事を楓に上手く説明出来ない。
楓の方も、答えなど待ってはいないようで一方的に話を続ける。
「姫様、お会いになればよかったのに。
安倍様は噂に違わぬ見目麗しき素敵な方でしたのよ」
楓の声は高ぶっていて、彼女がどれだけ龍星に心奪われたか手にとるように伝わってくる。
実は、その龍星に抱きしめられたなんて言ったら彼女を落胆させそうで、毬はますます何も言えなくなり、ただ、適当に相槌を打った。