砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 龍星は、毬に女から目を放さないよう頼み、その隣で式神から事情を聞いた。

 しかし、式神は急に光が走った後金縛りにあい記憶がないと言うばかりだ。気付いたら、血に塗(まみ)れた部屋の中で律(女の名だ)が短刀を握りしめ茫然としていたので、龍星の元に行くよう促したという。

 毬と律には式神は見えない。毬は、さめざめと泣いている律という女を見ていた。
 年の頃は三十歳過ぎくらいか。みすぼらしい家にしては悪くない着物を身につけている。ただ、もう随分古いもののようだった。

……昔は裕福だったということかしら。

 毬は想像を巡らせる。

 が、何より気になったのは、その顔がなんとなく太一に似ていることだった。

「龍、ご主人が見たい」

 龍星はため息をつく。何か見つけて走りださんばかりの犬のような瞳だ。

「駄目だ。顔は判別出来ないほど損傷している」

 毬が言いたいことは想像がつく。
 ほら、やはりがっかりしている。

「太一に似てなかった?」
 諦めきれないのか、唇を尖らせる。

「た……太一っ」

 青ざめた顔で律が呟く。その指先は震えていた。

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