砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
「偽りの神を崇め、偽りの愛を唄う。そんな人間にはこの程度で十分なんだよ。
 見ろ、この女の幸せに惚けた顔を」


 律には二人のやり取りなどまるで耳に入らなかった。

 去年の冬、流行病であっという間に死んでしまった愛息が今こうして目の前にいることだけを噛みしめていた。

 その為だけに夫を殺したのだ――

 否。
 何者かにそそのかされて、深く考える前に本能的に殺していたと言ってもいい。


 だから、我に返ってすぐに自分の仕業だとは思えず、怪の仕業だと思い込んでしまったのだ。


 律は息子をぎゅうと強く抱き締める。 

 龍星はやりきれない想いで印を結びはじめた。


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