砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
二の五
突然、辺り一面に霞がかかったように白くなった。
雅之は咄嗟に毬の手を掴もうとしたが、彼女はもうそこには居なかった。
「龍っ」
毬は心臓にギュッと締め付けるような痛みを覚え、屋敷に駆け出しその名を呼んだ。
「随分と情熱的な声をあげるんだな」
霞の向こうから、男の声がして、驚き、足を止める。
嘲笑うような、上から見下すような、それでいてどこか優しさを含んだような声に毬は目を細める。
「誰?」
「緑丸、俺のこと忘れた?」
切なさを帯びた声が響く。
「みどり、まる?」
呼ばれた毬は記憶を辿る。
初めて聞く名前のはずなのに、心のうちのどこかに懐かしい風が吹いたようなざわめきを覚えた。
雅之は咄嗟に毬の手を掴もうとしたが、彼女はもうそこには居なかった。
「龍っ」
毬は心臓にギュッと締め付けるような痛みを覚え、屋敷に駆け出しその名を呼んだ。
「随分と情熱的な声をあげるんだな」
霞の向こうから、男の声がして、驚き、足を止める。
嘲笑うような、上から見下すような、それでいてどこか優しさを含んだような声に毬は目を細める。
「誰?」
「緑丸、俺のこと忘れた?」
切なさを帯びた声が響く。
「みどり、まる?」
呼ばれた毬は記憶を辿る。
初めて聞く名前のはずなのに、心のうちのどこかに懐かしい風が吹いたようなざわめきを覚えた。