砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
「本当ですよ、毬様」

 華が目を釣り上げる。

「暑いからと言って何もお召し上がりにならないんですもの」

「だって暑いんだもの」

 寝具の中で毬はゴニョゴニョと言い訳する。

 が、華はキッと睨んだ。

「毬様、起きてくださいませ」

 丁寧な言葉遣いだが、有無を言わせぬ口調だ。

「嫌よ、ダルいもの」

「だからいつまでも治らないんですよ」

 確かに、毬が寝込んでもう10日近くが経とうとしていた。

 毬に甘い龍星は、心配しつつも病気ではないと知ると『涼しくなるまで寝てれば良い』と言い、無理矢理何かを食べさせようとはしない。

 家にいる間は一緒に横になったり、膝枕をしてくれたりすることがしばしばだった。


 それは、何故だかさして強い意志を持たないはずの華をも苛々させた。


 もっとも龍星にしてみれば、少し目を離すと何をしでかすか分からない姫がおとなしく家で過ごしてくれることは歓迎すべきことだった。
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