砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
「そんなに警戒しなくても、取って喰うわけじゃあるまいし」

 クツクツと喉の奥で帝が笑う。

 毬は反射的に、ギュッと龍星の着物を掴んだ。

「帝、あまり私の妹を苛めないで下さいな」

 背中から柔らかい声。

「身体は大丈夫か?」

 帝が珍しく気遣うように言うので、毬はゆるりと振り向き、目を丸くした。
 二月(ふたつき)ぶりに会う姉は、大きなお腹を抱えていたのだ。

「お姉様、ごか……」

 後ろから慌てて龍星が毬の口を覆う。

「宮中で大声はいただけないな」

 帝の子を身籠っていると知られたら、邪魔する輩が現れることは明白だった。
 いくら人払いしているとはいえ、用心するに越したことはない。

「御台様、あまりにお久しぶりでしたので、つい気が昂ぶってしまいました。ご容赦下さい」

 毬は興奮を飲み込み、丁寧に詫びた。
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