砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
「そうね。帝にああも苛められたら気も昂ぶるわよね。気にしなくてよろしくてよ。
待ちくたびれて迎えに来たの」
帝、千とともに、主室へと向かう。
いくら正室(帝の正妻)の妹とはいえ、何の身分もない自分がこんなところに居るのは場違いだ、と、毬は無言で違和感を訴える。
視線に気付いた龍星は、大丈夫の想いを込めて、そっと毬の肩に手を置いた。
主室には、所在なさげに男が一人立っていた。
人目を引く精悍な顔つき、着物の上からでも分かるがしりとした身体つき。
美丈夫でありながら、あくまでも控えめな態度でそこにいたのは、龍星の親友、遠原雅之であった。
留守を守る大型犬のような心持ちで緊張していた雅之は、心安い人物が二人も来たのをみて、傍(はた)目にわかるほどの安堵の息を吐いた。
「あら、そんな態度をとられたら、まるで私が雅之を苛めていたみたいじゃない」
千がそれを見咎め、軽口を叩きながら一段高いところ――普段なら御簾で隠しているところ――に腰をおろした。隣には勿論帝がいる。
それを見届けてから、龍星、雅之、毬は対峙できる場所に座した。
待ちくたびれて迎えに来たの」
帝、千とともに、主室へと向かう。
いくら正室(帝の正妻)の妹とはいえ、何の身分もない自分がこんなところに居るのは場違いだ、と、毬は無言で違和感を訴える。
視線に気付いた龍星は、大丈夫の想いを込めて、そっと毬の肩に手を置いた。
主室には、所在なさげに男が一人立っていた。
人目を引く精悍な顔つき、着物の上からでも分かるがしりとした身体つき。
美丈夫でありながら、あくまでも控えめな態度でそこにいたのは、龍星の親友、遠原雅之であった。
留守を守る大型犬のような心持ちで緊張していた雅之は、心安い人物が二人も来たのをみて、傍(はた)目にわかるほどの安堵の息を吐いた。
「あら、そんな態度をとられたら、まるで私が雅之を苛めていたみたいじゃない」
千がそれを見咎め、軽口を叩きながら一段高いところ――普段なら御簾で隠しているところ――に腰をおろした。隣には勿論帝がいる。
それを見届けてから、龍星、雅之、毬は対峙できる場所に座した。