砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 龍星がおもむろに立ち上がり、周りに結界を張った。
 妖(あやかし)どころか、人の盗み聞きさえ防ぐことができる優れ物である。

 結界が発動した途端、ずん、とした重みを感じ空気が一変する。

「もうお話しても大丈夫よ、毬」

 千が優雅に微笑んだ。
 とはいえ、帝をも含めた大人が集まっている重苦しい場所で、無邪気に口を開く気には到底なれない。

 毬は困惑した視線を泳がせる。

「夏の暑さに参って臥せていたんですってね。
 もう大事無いの?」

 痺れを切らした千が口を開いた。
 仕方なく毬もそれに答える。

「ええ、もう大丈夫です。
 お姉様こそ、存じませんでしたわ。ご懐妊されたなんて」

「私もなかなか気付かなかったのよ。先月くらいかしら、はっきりと自覚したのは。
 産婆の見所だと冬が来る前には産まれるらしいわ」

「おめでとうございます」

 毬は帝と千に恭しく頭を下げた。
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