砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
「何、仰(おっしゃ)ってるんですか!ご冗談ですよね?」

 ようやく言葉を絞り出した毬は、助けを求める視線を龍星に送る。
 雅之も初耳なのだろう。あからさまに目を丸くしていた。

 龍星は涼しい顔で、表情一つ変えない。

「だって、私はまだ裳着(もぎ)もすませてないわ」

 毬は声を上ずらせる。
 着物も、髪型も成人前後ではまるで異なる。

「だからこそ、だ。
 一時期、毬の存在は噂になったものの、噂好きの都人の間ではもう忘れ去られている。
 しかも、成人姿の毬を見たものもいない」

 帝が相変わらずの拒否を赦さない強い口調で言う。

 毬は震えそうになるのを抑えようと、ぎゅっと手の平を握りしめた。

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