砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 それをしてしまえば最後、二度と子供には戻れない。
 いつかは、確かに迎えなければいけないのかもしれないけれど。
 今、急に?
 しかも、姉の身代わりになるためだけに?

「そう難しく捕らえることは無い。
 仮の姿だよ。普段男装しているのと大差ない。
 もちろん、正式な喪着は改めて行えばいい。
 左大臣には盛大に執り行うよう命じてやる」

 心の整理がつかない毬は悔しさのあまりぎゅっと唇を噛んだ。
 男装と、成人女性では演じるのに差がありすぎる。

 男性にはなりたいが、成人女性になどなりたくもない。

しかも、それが帝の正妻役なんて! 

 重たい空気が真綿のように自分の首を絞めているようにさえ感じてしまう。



「何故ですか?
 まずは、理由をお聞かせ下さい」

 毬は無理矢理落ち着かせた声でそう問うのが精一杯だった。
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