砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 雅之がゆっくりと振り返った。
 相変わらずの精悍な顔に、柔らかい笑みを携えている。

「先日は、こちらこそ失礼しました。
 笛を溺愛していましてね。
 ついかぁっと……」

 言いつつ、毬の頬へと無骨な手を伸ばす。

「怖い思いをさせて、すまなかった」

 壊れ物を扱うかのように、そおっと雅之の手が毬の頬を撫でた。
 黒い瞳が、心の奥を見透かすかのように真直ぐに毬を映している。

 後悔を含んだ切ない眼差しと、優しさを湛えた甘い微笑み。

「心配していたのですよ。
 痛みのあまり眠れなかったんじゃないかって」

「そ、そんなにやわじゃないので、だだだだ大丈夫……」

 どうにも力が入らない。
 とくん、と。
 雰囲気に飲み込まれた心臓が、甘い痛みを持って跳ねた。

 雅之は頬に当てた手を彼女の輪郭に合わせ動かし、ゆるやかに顎を持ち上げた。あまりにも自然な流れに、毬は流されていく。

「そんなに強がらないで。
 ね?」

 ゆっくりと、雅之の端正な顔が毬のほうへと近づいてくる。
< 24 / 463 >

この作品をシェア

pagetop