砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
「タヌキは、気付きはじめているからな。
 毬の利用価値を」

「そうなのか?」

 思いもよらない発言に、雅之は目を丸くする。
 左大臣は毬のことをいかにも鬱陶しいと言っていただけではなかったか。

「お前がいたから、そんなそぶりをおくびにも出さなかっただけさ」

 龍星はきっぱりとそう言い切った。

 龍星は階級だけで言えば左大臣よりずっと下、しかも御所の中でも一匹狼で知られている。
 しかし、雅之の父の兄は太政大臣なのだ。
 左大臣はそこを軽く見て足元を掬われるような鈍い男ではなかった。


「そうか。役に立てたのなら何よりだ」

 申し訳なさそうに瞳を伏せた龍星を見て、雅之は一際爽やかに笑う。

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