砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
「そうだ。ありがとう、雅之」

 龍星はふわりと笑みを浮かべ、その後、瞳を伏せ自分の手に視線を落とし、



「――だが、それは俺の我儘なのかなと、思わなくもない」

 と、彼に似合わぬ自信のなさげな声で、ぽつりと小さく呟いた。

 自分みたいな、危険と隣り合わせなだけの地位もない男に縛られるよりも――宮中で華やかな生活をした方が幸せなのではないか。

 それを止める権利など、自分にあるのだろうか――


 龍星の中に、そういう想いがあることもまた、事実ではあるのだ。


「俺は色恋にはとんと疎いが――」

 雅之が前置きをしてから、言葉を続ける。

「我儘を押し殺したばかりに、恋を失った話なら幾つも耳にしてきた。
 ――噂も含めて、だが」

 気の利いた台詞の浮かばない雅之の、それが精一杯のそして心からの慰めだった。

「――そうか」


 龍星は、紅い唇にふわりと甘い笑みを乗せる。
 淋しそうな目元はそのままに。
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