砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
「大人しくそれなりの仕事を請け負っていればよかったものを」
口調だけは、なんてことはない涼しさを持って龍星は続ける。
いっそう、暇つぶしに世間話を優雅にする公達の口調にさえ思えるものだった。
「後悔先に立たず、とは、まさにこのことですね」
細い指先は、いつでも呪を形にした矢を放ち、道剣の心臓を一突きにすることができるだろう。
しかし、その瞳は不自然なほどににこりともしない。
瞬きもしないのに、潤いは消えず、垣間見える闇は刻一刻と不気味に深まるばかりだ。
道剣の瞳は、瞬き出来ず乾燥して涙が自然と溢れているというのに。
龍星の背中に見える大蛇は、一分の隙もなく陰陽法師に噛みつける時を虎視眈々と狙っているようにしか見えない。
――あれは、幻影なのか、それとも実在するものなのか――
それすら判別できなくなった状態は、初老の陰陽法師にとって、屈辱でしかなかった。
まだ、年の変わらぬ賀茂光吉に責められていたときのほうがましだった。
口調だけは、なんてことはない涼しさを持って龍星は続ける。
いっそう、暇つぶしに世間話を優雅にする公達の口調にさえ思えるものだった。
「後悔先に立たず、とは、まさにこのことですね」
細い指先は、いつでも呪を形にした矢を放ち、道剣の心臓を一突きにすることができるだろう。
しかし、その瞳は不自然なほどににこりともしない。
瞬きもしないのに、潤いは消えず、垣間見える闇は刻一刻と不気味に深まるばかりだ。
道剣の瞳は、瞬き出来ず乾燥して涙が自然と溢れているというのに。
龍星の背中に見える大蛇は、一分の隙もなく陰陽法師に噛みつける時を虎視眈々と狙っているようにしか見えない。
――あれは、幻影なのか、それとも実在するものなのか――
それすら判別できなくなった状態は、初老の陰陽法師にとって、屈辱でしかなかった。
まだ、年の変わらぬ賀茂光吉に責められていたときのほうがましだった。