砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
「遠原殿」
龍星が秘密の尋問を終え涼しい顔でそれを報告してしばらく経った頃、近衛府に居た雅之に、とある人物から声が掛けられた。
雅之は、それまで会話をしていた若い男から視線を外し、そちらに顔を向けた。
名前は知らないが見知った顔で、帝の付き人の一人だと分かる。
「何か」
帝が直接自分に用があるはずなどない。
雅之は、未だ全貌の見えぬ事件を前に身の振り方が分からずにいたので、自然、声も硬くなる。
「帝がお呼びです」
どことなく猿に似た風貌の使いの男がしれっと言う。
絶対に嘘だな、と、反射的に雅之は思う。
しかし、ここで揉めても面倒なだけだ。
「承知しました」
丁寧に返事を返して、立ち上がった。
「あの、遠原殿」
先ほどまで会話を交わしていた利発そうな男が、口を開く。
元服間もないのか、御所に勤めているにしてはまだまだ童の雰囲気を色濃く残していた。
「また、後ほど話を聞いていただいてもよろしいでしょうか?」
「もちろん、構わぬよ」
ありがとうございます、と、少年はほっとしたように笑った。
笑うとますます子供っぽくなる。
……これであのキツネの息子とは。
世の中分からぬものだな。
雅之は心のうちでそっと呟き、渋々と猿の後を追った。
龍星が秘密の尋問を終え涼しい顔でそれを報告してしばらく経った頃、近衛府に居た雅之に、とある人物から声が掛けられた。
雅之は、それまで会話をしていた若い男から視線を外し、そちらに顔を向けた。
名前は知らないが見知った顔で、帝の付き人の一人だと分かる。
「何か」
帝が直接自分に用があるはずなどない。
雅之は、未だ全貌の見えぬ事件を前に身の振り方が分からずにいたので、自然、声も硬くなる。
「帝がお呼びです」
どことなく猿に似た風貌の使いの男がしれっと言う。
絶対に嘘だな、と、反射的に雅之は思う。
しかし、ここで揉めても面倒なだけだ。
「承知しました」
丁寧に返事を返して、立ち上がった。
「あの、遠原殿」
先ほどまで会話を交わしていた利発そうな男が、口を開く。
元服間もないのか、御所に勤めているにしてはまだまだ童の雰囲気を色濃く残していた。
「また、後ほど話を聞いていただいてもよろしいでしょうか?」
「もちろん、構わぬよ」
ありがとうございます、と、少年はほっとしたように笑った。
笑うとますます子供っぽくなる。
……これであのキツネの息子とは。
世の中分からぬものだな。
雅之は心のうちでそっと呟き、渋々と猿の後を追った。