砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 そこで、『急ぎの仕事がありますから』などと体よく辞退できないところも、雅之の良いところだ。

 はぁ、それでは、などと言い渋々とはいえ結局、龍星の後について行く。

 もっとも、今回の件、いまだかなりの蚊帳の外なのでついていくことで少しでも事件全貌が見えるのではないか……という、淡い期待も少しは胸に秘めていた。

「龍星、あなたお父様に何か入れ知恵したわね?」

 人払いをした直後、御簾を上げた千が鋭い目つきでそう言った。

「さぁ」

 龍星は女性ならずとも虜にするような微笑を口許に湛えて、千を見た。

「……まぁいいわ。身の安全が守れるなら」

 これで計算どおりに千が黙るのだから恐ろしい、と、雅之は思わなくも無い。
 もっともこんな風景はもう、見るのに慣れていた。

 むしろその技を毬に使えば、全ては簡単に丸く収まるのではないかと龍星に進言したいくらいである。
 いや、しかし。
 龍星はきっとそれを理解したうえで、あえて毬には使わないのだ。

 そうやって、まるで催眠術にでも掛けるかのように動かして得られたものになど、興味がないのであろう。

 現に今だって、さして興味もないような顔でただ美しく微笑んでいるだけだ。

「大丈夫です。
 腕の立つ陰陽師をおつけしますので、ご心配なく。
 過度な心配は御身体に障りますよ」

「そうね」

 つん、と、千は視線を逸らす。

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