砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 ところで、と、帝は、空気をがらりと変えて口を開く。

「自分の愛する者は譲らないといいながら、人の愛する者を奪っていくとは、随分と身勝手な話ではないか?
 龍星」

 拗ねた口調はまるで、駄々をこねているだけのこどもそのもの。

「私の提案ではございません。
 愛娘の身を案じたお父様の愛がそうさせたのでございましょう」

 龍星はさらりとかわす。

「……龍星」

 白々しささえ漂う龍星の言い分を、帝は咎めようと声を荒げた。
 龍星は努めて静かに返す。

「証拠の無いことを探り合うのは詮無きことでございます。
 行き場所および今後のことについてお話にこられたのでしょう?」

 長い前振りの末、話はようやく本題へと辿り着いた。


 龍星はてきぱきと、自分の中にある計画を告げた。
 それは、周りのものを説得させるだけの力と魅力のあるものだった。

「では、よろしくお願いします」

 龍星が恭しく頭を下げる。

 結局、本日も一度も口を開いていない雅之と共に、龍星は弘徽殿を後にした。
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