砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 近づいてきた女の胸に、毬はほとんど無意識にその短刀を突き刺していた。

……しかし、相手は妖、
 空を刺したようなむなしい手ごたえしかなく、毬はぎゅうと目を閉じた。


 こんなことなら、都になんて戻ってこなければ良かった。
 嵐山で鄙びた日々を過ごしていれば良かった。

 走馬灯のように懐かしい日々が頭を過り、思わず閉じてしまった瞳から涙が零れる。



 そのとき。

「ぎぃやあああああ!!!」

 と、獣が深手の傷を受けたような、けたたましい悲鳴をあげて女は身を翻した。

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