砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
「冗談、だろ?」

 行家は誰も居ない部屋で、ようやく言葉を搾り出した。
 あざ笑わなければやってられない。

 こういう時こそ、酒を浴びるように飲みたい、とすら思った。
 まだ、人生で一滴たりとも口にしたことはないけれど。


 このままでは壊れてしまう。

 そこで、初めてああ、と思った。
 もう、道剣様は壊れてしまったのだ、きっと。
 あの男と対峙して、壊されてしまったのだ。
 今の行家には、あの二人のどっちが強いか、なんて考えるまでもなく分かるのだから。


 きっとここには帰って来られない。

 あの男が嵐山に来る前に、身辺整理をしておくほかないな。


 行家は、思考をまとめてようやくそこに思い至った。




――その頃には、日はもう、随分高く昇っていた。

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