砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 一方、その頃。
 遅い朝食をとった毬は、お気に入りだった中庭を見てひどく落ち込んでいた。

 昨日、猫を呼び寄せたせいで派手に荒らされている。

「私、草を採りに行きたいの」

 書斎に篭っている龍星に、外から毬は声を掛けた。

「毬、入っておいで」

 仕事を邪魔されたはずなのに、龍星の声は甘く優しい。
 でも、やっぱり邪魔は良くないし、と、逡巡している間に龍星が出てきた。

「もう、この部屋に入るのは怖い?」

 などと、蜂蜜を溶かして作ったような声で聞いてくるので、毬の心臓はとくりと跳ねる。

「違うのっ」

「そう、それは良かった。
 約束だからね、きちんと教えてあげるよ。
 毬が力を使いこなせる方法を」

「えと、それはそうなんだけど。
 草を、採りに行きたいの」

 毬はもう一度繰り返す。

「いいよ、そんなことしなくて」

 龍星は言わんとせんことは十分分かっているはずなのに、くしゃりとその頭を撫でた。

「だって」

 このままにしておくのは忍びない、と、その瞳が告げている。

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