砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
三の十
御所に着く頃には、龍星はいつもの龍星――すなわち、感情の見えない笑みを口許に絶えず携え、その瞳は漆黒の闇を切り取ったかのように底が見えない――に戻っていた。
無断欠勤が続くことや、出勤時間が遅いことを咎めてくる人がいるわけでもなく。
龍星は、当然のように陰陽寮へと足を進めた。
龍星は優雅なそぶりで、しかし注意深く寮の中を見て回る。
さして、変わったところは見当たらない。
「賀茂殿は?」
そこに居た若い陰陽師へと言葉をかける。
「独房にいらっしゃいます」
答えた若者は、何故か顔色が優れなかった。
「ここのところ、ずっと、か?」
「ええ。
取調べは終わったので、後は処分が決まるまで近づかなくて良いと、私などは思うのですが」
言葉を濁して感想を伝える。
青年はなかなか、実直だ。
「そうか」
「いえ、賀茂殿が悪いと申しているわけではありません、決して」
告げ口したと思われては困るとばかりに焦る青年の言葉に、龍星はふわりと、口許を緩めた。
「分かっている、そんなことは」
取調べが終わったのに、賀茂が道剣に執着する理由……。
龍星は知らず、その繊細な指先を紅い唇に当てていた。
心当たりは、一つある。
そう、自分に。
無断欠勤が続くことや、出勤時間が遅いことを咎めてくる人がいるわけでもなく。
龍星は、当然のように陰陽寮へと足を進めた。
龍星は優雅なそぶりで、しかし注意深く寮の中を見て回る。
さして、変わったところは見当たらない。
「賀茂殿は?」
そこに居た若い陰陽師へと言葉をかける。
「独房にいらっしゃいます」
答えた若者は、何故か顔色が優れなかった。
「ここのところ、ずっと、か?」
「ええ。
取調べは終わったので、後は処分が決まるまで近づかなくて良いと、私などは思うのですが」
言葉を濁して感想を伝える。
青年はなかなか、実直だ。
「そうか」
「いえ、賀茂殿が悪いと申しているわけではありません、決して」
告げ口したと思われては困るとばかりに焦る青年の言葉に、龍星はふわりと、口許を緩めた。
「分かっている、そんなことは」
取調べが終わったのに、賀茂が道剣に執着する理由……。
龍星は知らず、その繊細な指先を紅い唇に当てていた。
心当たりは、一つある。
そう、自分に。