砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 束の間の休息時間である甘い夜が過ぎれば、誰の元にも等しく朝がやってくる。

 龍星は渋る毬を強引に連れ、牛車で御所へと向かった。
 牛車ごと裏口へと入り、人目に晒されぬよう衣被(きぬかづき)を被った毬を連れて、そっと内裏へと足を運ぶ。

 千が妊娠したという情報を防ぐため、今、弘徽殿の出入りは厳重に監視されていた。
 龍星と毬は、そこへ足を踏み入れていく。

 千は退屈そうに、座っていた。

「明日よね、龍星」

 苛立ちを言葉にして、龍星にぶつける。

「はい、明日です。
 打ち合わせのため毬様をお連れしました」

「あら、毬。
 ついに龍星と夫婦(めおと)になるんですって?」

 千の言葉に、毬は思わず頬を赤らめる。
 それは、すなわち、夕べの淫らな戯れを認めることになるというのに。

「あらあら。
 毬、もっと堂々としてないと。
 余計に怪しまれてよ?」

 狼狽して龍星の後ろに隠れてしまう毬がおかしくて、千はついついからかってしまう。
 退屈しのぎにはもってこいだ。

「それにしても、どんな都の美女よりもこんなお子様が龍星の好みだったとは、知らなかったわ。
 本当に、すませたの?毬、とてつもなく照れてるんだけど」

 千が意味ありげな視線を龍星に送る。

「子供じゃないもんっ」

 龍星の後ろで目いっぱい頬を膨らませている毬の姿は、むしろ年齢以上にあどけなくみえて、それがさらに千を楽しませた。
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