砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 龍星は涼しい目元で、紅い唇に妖艶の色を乗せて答える。

「ええ、もちろんです。
 蝶はさなぎに戻れませんが、さなぎはこれから蝶になりますから。
 私、こう見えても気が長いんです。
 もちろん、蝶に返った暁には、かごの中から出しませんよ?」

「あら。妬けるわね」

 と、千が白けるのと同時に、

「私、さなぎじゃないもんっ。もちろん、かごの中の蝶にもならないわっ」

 と、毬はさらに拗ねてみせる。

「おやおや、君たちが来るといつだってここはにぎやかになるね。
 千も気晴らしが出来て良いことだな」

 やってきた帝が、その様子を見て僅かに微笑んだ。

「何か?」

 その帝が纏うただならぬ空気を感じて、龍星がすっと目を眇める。

「龍星、ここは姉妹二人に任せて少し力を貸してくれないか」

「あら、どうなさったの?」

 千が不安げに問う。
 帝は、口の端だけで笑って見せた。

「何、千が案ずることではない。
 毬、お姉様と仲良くな」

 子供に留守番を命ずる口調でそう言うと、毬の返事を聞くこともなく、帝は龍星を引き連れて足早に出て行った。

 かすかに、不穏の色香を残して。

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