砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
「よくいらしてくれた、龍星殿」

 左大臣家に着いた龍星は、手入れの行き届いた庭の見える客間へと通された。

 都でも類を見ぬほどの美形と称される龍星を一目見ようと、遠くから女房たちが窺ってくる視線を感じるが、龍星は気付かないふりでやり過ごし、目の前のタヌキ、こと、左大臣に視線を戻すと嫣然と微笑んだ。
 先日、親友の雅之に頼まれ、渋々御所へ赴き、帝に適当な戯言を並べ安心させた直後、この男にも捕まっただけれなく、今、こうして強引に左大臣家に招かれているのだ。とても人前では言えぬ相談があるという。

 先日娘を入内させたばかりというこの男。さらに何を望むというのか。



「相談というのは他でもない、娘のことなのだ」

 言いづらそうな顔でタヌキが切り出した。

「先日入内された?」

「いや、千のことは良いのだ。一刻も早く皇子を産んでくれれば」

 タヌキの下品な笑いに、龍星は内心うんざりするが、それをおくびにも出さず、優雅に微笑む。
 覗き見ている女房たちがほう、とうっとりした吐息を漏らした。

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